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ワクチン というものを考えるとき、やはり考える材料がなくてはいけないと思います。
今日は一冊の本を紹介したいと思います。
ワクチンとは何か、を我々に考えさせてくれるお話です。
微生物の狩人 ポール・ド・クライフ 著 秋元寿恵夫 訳 岩波文庫
上巻と下巻に分かれており、今日紹介するお話は、この上巻に載っているルイ・パスツールのお話です。
当時、狂犬病は人々にとって恐ろしい病気でした。
野良犬でも、やたら凶暴で人に噛みつく狂犬病に侵された犬というものがいました。当時「キチガイ犬」と呼ばれておりましたが、これに噛まれると1 - 2ヶ月後に10中8、9は、発症して、狂った様に苦しんで、水をやたら怖がり死んでいく。
フランス人のルイ・パスツールはこの治療薬、ワクチンを発明した人です。
狂犬病の犬の脳髄液を希釈して他の犬に注射すると、その犬は狂犬病の犬に噛まれても発症しないということを発見しました。
これは重要な知見です。
次の課題は、これをどの様に使うか。
パスツールは初めパリ中の犬に全部打たなければならないのか、と考えました。 しかし、これは無理な話です。
ある時、パスツールは素晴らしいアイデアを閃きました。
打つのは犬ではない。人である、と
狂犬病の犬に噛まれて発症するまで1ヶ月か2ヶ月くらいある。
この間にこの薬を打てば良いのだ、と。
しかし、人に打つのは大問題。人体実験になる。
これにはパスツールも悩み抜き、「自分で試そうと思っている」と周囲に漏らしていたという。
しかし、それはいくら何でも・・・と、周りの人も考えていた。
その様な時に、キチガイ犬にズタズタに噛まれた9歳の子供を連れたお母さんが、悲しみと絶望に苛(さいな)まれつつ、パスツールを訪ねてきた。
パスツールはやはりさすがに、この狂犬病のワクチンをを打つことはためらったが、助手でパスツールの信奉者の人が
「おやりなさい。この子は何もしなくてもおそらく死ぬでしょう」と。
パスツールはワクチンを打った。
すると、この子には1ヶ月経っても、2ヶ月経っても何も起こらなかったという。
人類が狂犬病を克服した瞬間である。
この話は世界中に瞬く間に広まった。
狂犬病に恐れを抱く人々がパリのパスツールのところに押し寄せたのである。
パスツールらはその群集をかき分けながら治療にあたった。
ある時、はるばるロシアから19人の農民がワクチンを求めてパスツールの研究所を訪れた。彼らの知っているフランス語は「パスツール」だけであったという。
彼らはワクチンを打ち、ロシアに戻っていった。 見事に回復した彼らをロシアの人々は奇跡が起こり死者が蘇ったかのごとく驚き、目を見張ったという。
ワクチンというものは、このように人類の福音である。
本来こうあらねばならないだろう。
それは人々の間に瞬く間に伝わるものであろう。
このワクチンも、こんなのを打ったら狂犬になってしまうぞ、とか、副反応がきついぞ、10万人か1万人に一人くらい死ぬぞ、ADE(抗体依存性免疫増強)どうするのだ、等とかいう、ネガティブな意見もあったであろう。
しかし、このような意見は、狂犬病ワクチンの圧倒的な効果の前にあっという間に消し飛んだはずだ。
なにしろ、この狂犬病のワクチンは、犬にズタズタに噛まれて何もしなかったら90%くらいの確率で狂犬病になり確実に死んでしまう、という人に打つのである。
この話は19世紀末の話。しかし、決して古くはない。我々にワクチンとは何かを改めて教えてくれる。
このような人々にあっという間に伝わり、何もしなくても人がワッとそれを求めて押し寄せる。
これを打ったら、地域振興券がもらえる、とか、ワク丸チン子・パスのポートピアかグリーン・パスか何かは知らないが、酒を飲めたり旅行に行けたりするぞ、とか、Go to で安く旅行がいけるぞ、とか、野球観戦、サッカー観戦してもいいぞ、などという甘い言葉で誘う類のものでは本来ないはずであろう。
これを、パスツールのこの話と比べるとどのような感想を皆様は抱くであろうか。
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私の専門は骨粗鬆症です。どのうように診療しているかのケースレポートです。
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